
デジタル化の波が押し寄せる昨今、金融業界も大きな転換点を迎えています。業務効率化と顧客サービスの向上が喫緊の課題となる中、大量文書のデータ化業務の自動化は避けて通れない重要なテーマとなっています。
以前のコラムでは、「AIRead」の決算書OCRソリューションを活用してデータの手入力作業から解放し、データ活用で業務の効率化や精度の向上などを実現する方法についてご紹介しました。
決算書OCRの導入で実現する、金融機関の業務革新とリスク管理
そして、AIReadは生成AIと組み合わせることで、さらなる進化を遂げようとしています。本稿では、金融業界向けのDXソリューションによる更なる業務効率化の可能性について解説します。
OCRの限界を超える:生成AIの可能性
従来のAI-OCRは100%の正確性を保証できないため、読み取り結果に対し人手による目視での確認作業が常に必要でした。この作業は、特に大量文書のデータ化業務を行う金融機関にとって大きな負担となっています。
例えば金融機関が顧客から毎年受領する決算書には多くの有用な情報が含まれていますが、作業負担が大きいためデータ化できるのは一部のデータに限られていました。しかし、近年急速に発展している生成AI技術をOCRに活用することで、この限界を打破する新たな可能性が生まれています。
その一つが、読み取り結果の自動チェック機能です。
近年のAI-OCR技術の進化により、読み取りの機能、正解率は飛躍的に向上しましたが、依然として目視でのチェックが必要でした。そのため、AI-OCRの導入だけでは大幅な人的コストの削減までは実現出来ていません。

そこでアライズイノベーションでは、AIRead(AI₋OCR)と生成AI-OCRを組み合わせ、従来は避けられなかった目視チェックを大幅に削減するための機能の開発を進めています。
生成AI-OCRとは、画像や動画、言語を同時に理解し処理できる人工知能モデルのことです。人間のように視覚情報と言語情報を結びつけて処理することができるため、様々な分野で活用されています
生成AI-OCRへは、あらかじめ大量の決算書を学習(ファインチューニング)しておきます。AIReadが読み取った結果と、生成AI-OCRが読み取った結果をAIReadが内部で突合します。突合結果はローコード開発ツールで作成された画面に表示されますが、一致しない部分のみを人が目視でチェックすることで、全ての読み取り結果をチェックする必要が無くなり、確認作業を大幅に削減することができます。

この技術革新は、特に金融機関の融資審査業務における決算書のデータ化業務など、大量かつ正確性が重視される業務のデータ化に高い効果を発揮すると考えています。
また、単なるデータ化作業の効率化だけでなく、人的エラーの削減やより高度な業務へのリソース再配分を可能にし、金融機関の競争力強化に直結させることが出来ると考えています。
未来を見据えた技術革新
今回ご紹介した生成AI₋OCRを用いた自動チェック機能は、2025年7月現在開発が進められており、近日中にローンチできる見込みです。しかし、アライズイノベーションは現在の成果に満足することなく、さらなる技術革新を目指しています。
将来的には、生成AI-OCRが自律的に文脈をよみとり、判断・確認を行うシステムの開発を視野に入れています。これが実現すれば、人が行っていた暗黙知を補完し、更なる業務効率化や人的コストの削減が期待されます。
例えば、生成AI-OCRが帳票には記載の無い情報までデータ化することができれば、これまで業務知識を持つ人材でしかできないと考えられていた業務までも、生成AI-OCRが支援できるようになるでしょう。
AIReadが切り拓く未来の金融業務は、人間の創造性とAIの効率性が融合する新たな領域です。これからも、未来を見据えた革新的なソリューションの開発を目指します。