導入事例 みずほ銀行 様

みずほ銀行が営業スタイルに変革を起こす!
勘定科目明細のデータ化を推進し、未来に向けた競争力を高める営業DX

業種:金融業
製品:AIRead、AIRead ETL Option

カンパニー制を導入し、“お客様第一”の観点から多角的な事業を展開するみずほフィナンシャルグループ(以下「〈みずほ〉」)。デジタルトランスフォーメーション(DX)にも積極的で、顧客に新たな価値を提供する“攻め”のDXと、業務効率化を図る“守り”のDXの両面からさまざまな取り組みを進めている。本稿では、その一環として〈みずほ〉のグローバルマーケッツカンパニー(以下、GMC)が立ち上げた「未来化プロジェクト」における、AI-OCR「AIRead」を用いたデータ利活用事例について、みずほ銀行 市場営業部 未来化推進チームの石井 智士 氏、鳥場 泉水 氏に話を伺った。

(左)株式会社 みずほ銀行 市場営業部 未来化推進チーム 参事役 鳥場 泉水 氏
(右)株式会社 みずほ銀行 市場営業部 未来化推進チーム 次長 石井 智士 氏

先を見据えた営業スタイルを確立するために、データマイニングの環境整備に着手

金利や為替など銀行の市場業務や取引を担当するみずほ銀行の市場営業部。2017年にGMCで未来化プロジェクトが立ち上がり、2019年10月に同部内に未来化推進チームが発足した。未来化プロジェクトの立ち上げから携わり、未来化推進チーム 次長を務める石井 智士 氏 は立ち上げの背景を次のように語る。

「GMCでは、DXやFintechといったキーワードが出始めた5年ほど前に未来化プロジェクトというDX推進の取り組みを開始しました。テクノロジーが急速に進化していく中で、金融業界においてもゲームチェンジが起こることは必至であり、5年後10年後といった先を見据えると、現状のビジネスでは競争力が維持できないかもしれません。特に市場で取引されている商品をお客様に提供している当部においては、中長期的視点で新たな価値を創出していく必要があると考え、2019年に未来化推進チームを発足しました」(石井氏)

こうして発足した未来化推進チームは、データマイニングを軸にした取り組みを開始した。行内のデータを集め、可視化し、効果的な利活用を実現することで、先を見据えた営業スタイルに変革し、顧客に新たな価値を提供することが狙いだ。行内に蓄積されているデータは多岐にわたるが、未来化推進チームがまず着目したのは、取引先から受領している決算書(財務諸表)だ。もともと営業部門に在籍しており、現在は未来化推進チーム 参事役を務める鳥場 泉水 氏は、当時を振り返る。

「未来化推進チームの発足前に準備室を立ち上げ、営業担当者にヒアリングを実施したところ、決算書の情報が必要というニーズが明示されました。これらの情報が行内にあることはわかっていたものの、営業活動に活かせていないことに、私自身も歯がゆい思いをしました。しかし保管場所を探して支店のキャビネットに取りに行ったり、PDFデータを頼んで送ってもらったりするのはかなりの手間がかかります。そこで行内に散在する情報を集めてデータ化する仕組みを検討し始めました」(鳥場氏)

決算書は融資審査システムに画像データとしても蓄積されており、損益計算書や貸借対照表(バランスシート)についてはテキストデータ化されていたが、勘定科目明細の財務情報に関してはテキスト化できていなかったという。

「融資審査システムには与信の審査に必要な決算書を画像データとして取り込み、審査に必要な部分を読み取ってデータ化していました。この画像データを利用し、勘定科目明細の情報までをテキスト化しようと考えました」と石井氏は語る。

石井 智士 氏

2回のPoCでじっくり検証、「AIRead」採用と開発の裏側

決算書の勘定科目明細は、国税庁が提示したレイアウトに合わせて作成されているが、企業によって行・桁・幅・マージンなどが異なっており、従来型のOCRでは読み取りが難しかったという。このため、今回のプロジェクトでは、AI、ディープラーニングを用いることで画像データ内の文字を高精度でデータ化するAI-OCRの導入が検討された。

導入にあたっては、3社のソリューションが比較検討され、そのなかの1つが、アライズイノベーションのAI-OCR「AIRead」となる。2020年から2021年にかけて実施した1回目のPoCでAI-OCRの精度を確認し、2回目のPoCでは仕分けを含めた実践的なPoCを行ったという。

「AI-OCRに限らず、新しい技術を使ったPoCは判断が難しい面があります。本番環境のデータとPoCのサンプルデータには違いがあり、汎用性も含めて精度を見定めるのは実に難しいことです。精度を計り、データを集めて改良できるかを試し、また精度を計って……、という非常に体力を使う作業でした」と石井氏は当時を振り返る。

こうして2回のPoCを通して、総合的に判断した結果、AIReadが採用された。採用の決め手としては、PoCで確認できた読み取り精度の高さに加え、他銀行で勘定科目明細の読み取りを実現している実績が大きかったという。

「評価基準としては、AI-OCR自体の精度はもちろん、導入までのスピード感、継続的なサポート体制なども重視しました。銀行への導入実績があるアライズイノベーションならば、ゴールをどこに設定するのかといった判断合わせを含め、共通認識を持って進められると判断しました」(鳥場氏)

開発にあたっては、本番環境で活用するために必要な精度の見極めに苦労したという。

「現場が求めているのはOCRの性能ではありません。OCR識字率がどれだけ高くても、最終的に業務に落とし込めなければ、大きな効果は期待できない。このギャップを開発プロセスに落とし込むのが苦労したポイントです。アライズイノベーションさんにはプロジェクト管理から技術面(チューニング)まで、手厚い支援に助けられました。PoCをふくめると全体的に長いプロジェクトとなっていますが、開発期間自体は6カ月程度と、かなりスムーズに進められたと思います」(鳥場氏)

こうして2022年の12月より稼働が開始し、運用していく中でユーザーからのフィードバックも反映しながら、今後も継続的なブラッシュアップを続けていく構えだ。

稼働開始から半年で早くも営業スタイル変化の兆しが

現在はシステムが稼働したばかりだが、本年度中を予定している本格稼働に向けて、すでに市場営業部内の動きに影響を与え始めている。これまでの営業部門では、必要な決算書の情報は自分で取ってくるというスタンスだったが、今回のプロジェクトを経て、膨大なデータが連携・優先順位付けされたことで、営業スタイルを変革できるのではないかと、営業部門の期待感が高まっているという。

「決算書はさまざまな“気づき”が得られる宝の山といえます。AIReadを用いて、宝の山である決算書を可視化・分析できるようにした今回のプロジェクトは、私たちが見据える新たなビジネスの創出、お客様への価値提供を実現するうえで、非常に重要な役割を果たすと考えています」石井氏は語り、今後も営業に役立つデータ利活用の取り組みを強化していきたいと力を込める。

「金融機関にとって重要なデータとなる財務情報は、上場企業における有価証券報告書と非上場企業における決算書・勘定科目明細書に二分されます。日本国内で上場企業は3,000社程度で、残りはすべて非上場企業と考えると、勘定科目明細書のデータ化の意義は大きいと考えています。情報量を増やし、アプローチを拡大することによって、潜在的なビジネスチャンスが見えてくるはずです」と鳥場氏は語り、今回のプロジェクトを、その実現に向けた第一歩と捉えている。

鳥場 泉水 氏

グループ全体、業界全体のデータマイニング推進に寄与していく

みずほ銀行が進めるデータ利活用促進における今後の展望として、石井氏は次のように述べる。

「GMCは、〈みずほ〉のなかでも比較的早い時期からDXに取り組んでいる組織だと思います。一方、〈みずほ〉全体を俯瞰してみると、全社的なDXの必要性は高まっており、みずほ銀行においても行内すべてのデータを集約・活用できる基盤構築が今後の競争力につながっていくこともたしかです。こうした流れをふまえ、市場営業部 未来化推進チームとしては、今回のプロジェクトの成果を全社的に還元していきたいと考えています」(石井氏)

みずほ銀行では、今後もAIReadを活用したデータマイニングを推進していく構えで、アライズイノベーションには、他行も含めた業界全体のノウハウを集約・共有して業界のコンセンサスを得るという役割を期待しているという。

GMCの取り組みも含め、みずほ銀行が推進するDXと、そのなかで活用されるAIReadが提示するAI-OCRの可能性には、今後も注視していく必要がありそうだ。

導入ソリューション

AIRead ETL Option サムネイル

お客様情報

組織名株式会社みずほ銀行
所在地東京都千代田区大手町1丁目5番5号(大手町タワー)
Webサイトhttps://www.mizuhobank.co.jp/index.html