導入事例 鹿児島県国民健康保険団体連合会 様

業務量の増加に備えAI-OCRを導入
『後期高齢者の質問票』のデータ化業務を自動化

業種:地方公共団体
製品:AIRead

鹿児島県国民健康保険団体連合会(以下、連合会)は、国民健康保険法に基づき、会員である鹿児島県、県下の市町村、国保組合あわせて46会員(保険者)が共同して設立された、約35万人の国保被保険者の国民健康保険制度運営を担う団体組織だ。保険者は、住民に身近な自治体等として被保険者の資格管理、保険料の決定や賦課・徴収、保険給付の決定、保健事業、財政管理、被保険者への相談対応などを行っている。連合会は、保険者の目的達成のために、診療報酬等の審査支払業務のほか、保険者事務の共同処理、給付の適正化、保健事業等を支援している。

そんな連合会は、全体最適化の目的達成のひとつとして、ICTやAI等デジタル技術を積極的に活用した定型業務の自動化・省力化を目指しており、『後期高齢者の質問票』のデータ化業務の効率化を果たす目的で、2022年にAI-OCR「AIRead」を導入した。

左から鹿児島県国民健康保険団体連合会 永田 氏、木村 氏、阿久根 氏

連合会が実現した業務効率化の内容とその効果について、鹿児島県国民健康保険団体連合会 総務課 木村氏、阿久根 氏、保険者支援課 永田氏にお話を伺った。

令和4年(2022年)度から新たなデータ化業務が発生することに

後期高齢者医療制度の健康診査(健診)については、特定健診の項目に準じた標準的な『質問票』が活用されてきたが、フレイル等高齢者の特性に沿った質問項目ではなかったことから、標準的な『質問票』に代わるものとして、厚生労働省において、令和2年度に新たな『後期高齢者の質問票』が策定された。この質問票は主に後期高齢者に対する健診の場で使われ、食生活や運動習慣、また物忘れの有無など、高齢者の特性を踏まえた健康状態を総合的に把握し、高齢者向けの保健指導を行うことで将来の健康・長寿に向けたアドバイスを目的としている。また、この質問票を健診の場だけではなく「通いの場」等において活用することで、高齢者の生活習慣改善や、地域で高齢者の健康を支える環境を整えることにもつながる。

鹿児島県国民健康保険団体連合会 永田 氏

これをうけ、連合会では令和4年度から「後期高齢者質問票登録業務」として、市町村が回収した後期高齢者質問票の情報を「特定健診等データ管理システム」へデータ登録する業務を開始した。

市町村は「通いの場」等で質問票を回収し連合会に提出する。連合会は、それらをシステムに登録する必要があったが、保険者支援課では現行の業務で手いっぱいであり、新たにこの質問票データ化業務を行う余力が職員にはない状況だった。外部に委託する選択肢もあったが、連合会ではAI-OCRで問題を解消できるのではないかと考え情報収集を行った。

複数のAI-OCRを比較検討する

連合会はインターネットから複数のAI-OCR候補を選定、問い合わせを行い、ベンダからの紹介をうけた。ところが、ほとんどのAI-OCRはクラウドサービス(インターネットへの接続)を前提にしていた。

データ化したい質問票には氏名や健康状態などの個人情報が含まれており、インターネットに接続された環境では利用できないデータのため、多くのAI-OCRは選定の対象外となった。インターネットに接続不要なオンプレミスのAI-OCRもあるものの、GPU搭載の高性能サーバを前提とし新たなハードウェアの投資が必要となるため採用は困難であった。また、AIが搭載されていない従来型のOCRは、一般的なPCで利用できるが手書き文字の読み取りには適さないものが多かった。

そのような状況の中、アライズイノベーションのAIReadは、オンプレミスの一般的なPCでスモールスタートが可能なAI-OCRとしてほぼ唯一のソフトウェアであった。

機能A社A社B社AIRead
利用形態クラウドオンプレミスオンプレミスオンプレミス
AIエンジンありありなしあり
追加投資不要必要不要不要
AI-OCR比較表 ※取材内容をもとに作成
青色マーカーが条件に合致

AI-OCRの評価から選定まで

連合会総務課の木村氏はアライズイノベーションに問い合わせをし、オンラインでAIReadの紹介とデモをうけた。利用できそうな感触を得た木村氏は、続けて無償トライアルを申し込んだ。

「短期間だが無償利用ができたので、使い勝手や読取結果を確認することができた。一部の個所で工夫が必要だったが、アライズイノベーションの担当者から設定方法や帳票レイアウトの変更についてアドバイスを受けることができ、実際の運用イメージを掴むことができた」(木村氏)。

自分のPCで実際の質問票を使用したトライアルを実施することで、AI-OCRの有効性とAIReadの特徴や読取速度・精度を確認することができたという。「OCRをしやすくするためのレイアウトの工夫など、実際の導入に向けた課題を事前に確認することができたのはとても有意義だった」(木村氏)。

鹿児島県国民健康保険団体連合会 木村 氏

連合会はこれらの機能要件を織り込んだ調達仕様書を作成、令和4年度に入札を公示し、複数提案の中から、機能、価格の面で優れていたアライズイノベーションのAIReadを採用した。

実際に導入をして

連合会は、令和4年7月よりAIReadによる『後期高齢者の質問票』の読み取りとデータ化の運用を開始した。月平均200枚程度の質問票のデータ化をする必要があったが、AIReadで読み取り結果を確認・修正しCSVファイルに出力、連合会で使用している「後期高齢者質問票データ作成システム」にインポートすることで実現することができた。手書き文字を中心に1枚あたり20項目程度のデータ化が必要となるが、仮に全てを人手で行う場合と比べて、1/3程度の作業時間で完了できているという。AIReadの機能でインポート用のCSVレイアウト形式で出力することができたため、効率化が実現できたという。

「数字、チェックマークの文字認識精度は高く、人の確認作業は不要のレベルである。手書きの日本語文書の精度はそこまで高くなかったが、AIReadの最新バージョンでは精度が上がっており、本会としても今後の業務拡大に繋げていきたい」(永田氏)。

業務のシステム構成図

今後の計画

鹿児島県国民健康保険団体連合会 阿久根 氏

令和4年度は、当初の目的である『後期高齢者の質問票』のほか、内部で使用する文書を中心に2種類の帳票のデータ化業務でAIReadを活用できているという。「簡単な帳票は、アライズイノベーション社のサポートで何とか自分たちでAIReadの定義を作成することができた。今後は、請求書などのデータ化業務にも活用していきたい」(木村氏)。とのことだ。

また「今後は外部システムとの連携も多くなるため、RPAとの組み合わせによりさらなる自動化をはかっていきたい」(阿久根氏)。

紙からデータを手入力することが当たり前と思っていた業務は、まだ多数ある。これまでの業務視点を変え、AI-OCRやRPAを用いて効率化できる業務に対し積極的に改善していきたい。また外部にデータ入力を委託している業務についても、将来見直しを考えたい。
そういった声が聞こえるようになってきた連合会の業務効率化は、準備期間から本格的な普及期間に入ろうとしている。

まだまだ紙からの業務が多い連合会では、これからもAI-OCRとRPAを活用することで職員のワークライフバランスを実現しながら運営していくことだろう。

鹿児島県連合会のマスコットキャラクター
「健康ぼうや」

導入ソリューション

お客様情報

組織名鹿児島県国民健康保険団体連合会
所在地鹿児島市鴨池新町7-4
鹿児島県市町村自治会館 3階
Webサイトhttps://kokuhoren-kagoshima.or.jp/