金融機関の業務をAI-OCRで改善!
AIReadが実現した勘定科目明細の自動読み取り
業種:金融業
製品:AIRead、AIRead ETL Option
山梨中央銀行は、山梨県甲府市に本店を置く県内唯一の地方銀行で、第十国立銀行を前身としている。県内シェアは預金約51%、貸出金約46%。自己資本比率は12.26%を誇り、健全経営のもと、地域とともに歩む地方銀行だ。
そんな山梨中央銀行が財務分析業務を効率化する先進的な取り組みを開始し、話題となっている。アライズイノベーションと三井情報が共同開発した「勘定科目明細 AI-OCR 入力システム」を導入。どのようなシステムかというと、OCR(文字認識)にAI(人工知能)を加えたAI-OCR「AIRead」で、融資審査における決算書の勘定科目内訳明細書を読み取ってデータ化し、「OCR 決算書入力システム」で修正および紐付けを行うことで各種財務を分析し、帳票を自動作成するというものだ。
同行が「勘定科目明細 AI-OCR 入力システム」の運用を目指した理由とその効果について、山梨中央銀行 融資審査部 融資審査企画課の穂阪敏文氏、融資審査部 ローンセンター業務課の下原寿一氏、内田亜沙子氏にお話を伺った。
財務分析業務の効率化を目指す山梨中央銀行
融資における信用調査の際に、最初に行われるのが財務分析だ。山梨中央銀行は、この財務分析に三井情報の財務分析ソリューション「CASTER」を用いている。これまでは、勘定科目内訳明細を登録するにあたり、1社あたり約15~20分程度の手入力が発生し、それが約7,000法人分あるため、各営業店における行員の業務負荷は膨大だったという。
この状況を改善すべく検討を続けていた同行は、CASTERを更改するタイミングで三井情報に打診。アライズイノベーションの紹介を受け、2017年ごろからプロジェクトがスタートした。そして2018年前半には山梨中央銀行、三井情報、アライズイノベーションの3社によって、「勘定科目明細 AI-OCR 入力システム」のPoC (Proof of Concept / 概念実証)を実施。2020年から導入が開始され、2021年1月18日に正式運用が開始された。
AIReadが実現した勘定科目内訳明細の高精度な読み取り
勘定科目明細の読み取り自動化のカギを握っていたのが、アライズイノベーションのAI-OCR「AIRead」だ。AIReadはディープラーニングの手法を用いて画像から文字を認識し、データ化するというソリューションで、手書き文字や非定型の帳票も高い精度で読み取れることが大きな特徴だ。これに加えデータ加工・集計用の「AIRead ETL Option」を利用することで、勘定科目内訳明細書の読み取りからデータ化までを一気通貫で行える。
ただし、実際の勘定科目内訳明細書は特殊文字や書式の幅や高さが提出する企業ごとに異なるなどの要因で読み取りが難しい場面があり、導入当初は読み取り精度に不足を感じたこともあったという。これに対してアライズイノベーションは、実際の帳票を学習させることで精度を向上させ、現在では90%を超える読み取り精度を実現している。
山梨中央銀行
融資審査部 融資企画課
副長 穂阪 敏文 氏
山梨中央銀行
融資審査部 ローンセンター業務課
内田 亜沙子 氏
「2020年の夏頃、『(株)』のような特殊文字が多く含まれた帳票や、ふだんあまり使わないフォーマットを用いた帳票などのサンプルを複数学習させたことで、だいぶ精度が上がったと感じます。サンプルの用意に時間がかかってしまいましたが、アライズイノベーションさんには、遅れた時間を取り戻せるくらいスピーディな対応をしていただき、非常に助かりました。また読み取りが難しい最大の理由として、勘定科目内訳明細書が繰り返しコピーされているものだったりして、そもそもの帳票自体が劣化しているという問題もあります。こちらは業務フローの改善を進めていきたいと思います」(穂阪氏)
正式運用が開始された2021年現在、データ化の作業はローンセンター業務課に移行され、各営業店の業務負荷の軽減に着手した。各営業店は顧客から受け取った決算書をスキャンするとローンセンター業務課に画像ファイルが送信される。勘定科目内訳明細書はAIReadが実行され、ローンセンター業務課は届いた決算書と勘定科目内訳明細書のデータを確認する。そして完成したデータを再び営業店に転送するといった流れになっている。
「勘定科目内訳明細書の読み取りはAI-OCRに任せているので、手作業はほとんどありません。現状ではうまく読み取れないものもありますが、今後回数を重ねるごとに改善されていくものと期待しています。これまでローンセンター業務課の業務ではありませんでしたが、目にしてこなかったデータに触れる機会があるのは、業務を広い視野で捉えるきっかけにもなりますし、良い勉強になります」(内田氏)
「現状、うまく読み取れなかったデータは営業店に修正してもらっていますが、将来的には修正なしでそのまま利用できるようにしたいですね。現在はまさに変革の途上という状況ですが、目標は各営業店の事務作業を極力ゼロに近づけることです。ローンセンター業務課という限られた人員で効率よくすべてのデータ化が行えれば、全体の効率化も図れます。銀行の今後のためにも、より良い運用を目指していきたいと思います」(下原氏)
山梨中央銀行
融資審査部 ローンセンター業務課
課長 下原 寿一 氏
これからの銀行に求められる蓄積データの利活用
金融機関は紙の帳票をベースとした多数の業務を抱えており、これらのデータ化をスームズに進める取り組みは、金融機関のこれからの発展に欠かせないものだろう。山梨中央銀行はこの課題に率先して取り組み、銀行の業務効率化を推し進めようとしている。昨今はほかの金融機関からも、その運用について知りたいと見学が増えているそうだ。
穂阪氏は「今後、データ化の精度と業務プロセスをさらに向上させ、営業店とローンセンター業務課の事務負担をより軽減させたい」と話すとともに、AI-OCR「AIRead」のさらなる活用について次のように語る。
「営業店や他部署からAI-OCRを別の部分で活用したいという声も出ています。たとえば、住宅ローンの仮審査などですね。通常はタブレットで行っていますが、紙しか扱えないところもあります。そうした紙の書類をデータ化するのに役立てたいと考えており、いまアライズイノベーションさんと具体的な話を進めていると聞いています」(穂阪氏)
そして最後に、金融機関がAI-OCRを導入する意義、山梨中央銀行のICTへの取り組みと今後の展望について次のように語ってくれた。
「当行に集まってきた情報をデータ化し、いかに利活用するか。これは銀行の収益に直結する課題といえます。集計したデータは営業推進や信用リスクの分析など、多方面で活用できると思います。ほかの金融機関でも、データの利活用が徐々に進んでいるのではないでしょうか。そういった動きと同じように、積み上げたデータを今後に生かしていきたいと思っています」(穂阪氏)
信頼性の高さが求められる金融機関において、情報をデータ化するために導入されたアライズイノベーションの「AIRead」。このようにAI-OCRはさまざまな可能性を秘めており、その活用は今後さらに広がりを見せることだろう。
導入ソリューション
お客様情報
会社名 | 株式会社山梨中央銀行 |
本店所在地 | 山梨県甲府市丸の内一丁目20番8号 |
Webサイト | https://www.yamanashibank.co.jp/ |